蕉風俳諧(しょうふうはいかい)とは、松尾芭蕉およびその門流の信奉する俳風。ときに「正風」と称することもあるが、他流にもこの呼び名があり、芭蕉固有の名称とは言えない。蕉風とも。

概要

貞門俳諧、談林俳諧と続く史的な流れの中で、言い捨ての俳諧から天地有情の事情を不易流行の詩美へと転換し、それを追求したところに蕉風の特徴がある。

蕉風の成立期は、延宝末年から天和期にかけての深川草庵での「貧にしてなお一人侘ぶ」世界に共鳴した者が参集し始めた貞享期とされる。芭蕉生前の蕉風は『虚栗』『冬の日』の気概高致な風狂の文学、『ひさご』『猿蓑』の景情融合・姿情兼備の円熟した境地、『すみだはら』『続猿蓑』のさらりとした平淡な「かるみ」の俳風と変遷していった。

18世紀後半に入ると「芭蕉に帰れ」を合い言葉とする俳諧復興運動が展開され、与謝蕪村・久村暁台らのように浪漫的・脱俗的俳風が創出されたが、厳密に言えば蕉風そのものではなかった。その後も蕉風の名は依然として重んじられ、芭蕉は偶像として崇拝もされたが、明治になり正岡子規による俳諧革新運動の洗礼を受け、それまでの蕉風俳諧とはまた別の近代俳句として生まれ変わった。

史跡

愛知県名古屋市中区錦三丁目の名古屋テレビ塔前には「蕉風発祥之地」碑が建立されている。貞享元年(1664年)、松尾芭蕉は名古屋城下で俳諧興行を行ったとされ、蕉風を確立したとされる『冬の日』に採録されている句はその時詠まれたものである。「蕉風発祥之地」碑は、この俳諧興行の行われた地に建てられている。

脚注

出典

参考文献

  • 日本古典文学大辞典編集委員会 編『日本古典文学大辞典』 3巻、岩波書店、1984年4月20日、380-381頁。全国書誌番号:84038823。 
  • 岡本勝; 雲英末雄『近世文学研究事典』(新)おうふう、2006年2月1日、289-292頁。ISBN 4273033844。 

関連項目

  • 荒木田守武
  • 松尾芭蕉

《芭蕉俳句選》 擲筆庵華雀 編 元文4年(1739年) 2冊 細道・より道・松尾芭蕉

楽天ブックス 蕉風俳諧における〈季語・季題〉の研究 東聖子 9784625443008 本

枯枝に烏のとまりたるや秋の暮

元禄時代に生きた旅人兼俳諧師「松尾芭蕉」と『奥の細道』を元予備校講師がわかりやすく解説 ページ 2 / 3 Rinto

【1】江戸の俳諧 <芭蕉と蕉風>-俳諧三昧 たてやまフィールドミュージアム - 館山市立博物館